仙台高等裁判所 昭和28年(う)463号 判決
(イ) 選挙運動は各選挙につき立候補届出前においては何人と雖もこれをなし得ないことは公職選挙法第一二九条により明らかであるところ、被告人の本件所為は当時衆議院が解散せられ総選挙が行われることを見越して、その選挙に当り川村が立候補することの情を知り、その際同人に当選を得しめる目的でなされた、いわゆる選挙運動であることは本件記録及び挙示の証拠により肯認しうるところであつて、仮に所論の如く、当時川村において立候補の決意未定であつたとしても立候補を条件として投票を依頼する以上これを選挙運動と認むべきこと多言を要しないところである。
(ロ) 所論は黙秘権を告げないで審理をした違法があるというのであるが、公判調書に記載すべき要件は、公判調書の簡易化に関する規則の制定によつて改められた刑訴規則第四四条により同条第一項に掲げる事項の外、通常履践される手続の如きはこれが記載を省略し、特に訴訟関係人の請求によりまたは職権で命じた事項を記載すればたりることになつているのであるから、被告人及び弁護人はその公判手続に異議ある場合はその旨申立をなし、調書の上に明確にしておくべきであつて、然らざる限り公判手続は適法になされたものと認むべきである。然るに原審公判調書の記載によると、この点につき被告人または弁護人からなんらの異議を述べられた旨の記載がないから、黙秘権及び供述拒否権を告知した上、適法に公判手続が行われたものと認むべきである。